Date: 2026/08/26
こんにちは、ワールドワイド社労士事務所です。
パートタイマーや契約社員といった有期雇用社員から、「正社員と手当や賞与が違うのはなぜですか?理由を教えてください」と質問され、明確な根拠を持って即答できずに困ってしまった…というトラブルに直面したことはありませんか?
令和8年(2026年)10月1日より、パートタイム・有期雇用労働法に関する重要ルールが改正・施行されます。
今回の改正は単なる通知書の文言変更にとどまらず、放置すれば10万円以下の過料が科される法的義務の追加や、待遇差に対する説明責任の強化が含まれています。
今回は、人事・労務担当者が今すぐ把握しておくべき改正のポイントと、施行日までに進めるべき実務対応を分かりやすく解説します。
目次
■ 1. 令和8年10月1日改正の主な変更点(原因・背景)
今回のルール改正の背景には、同一労働同一賃金の原則が広がる中で、依然として「正社員だから」「将来の役割期待が違うから」といった抽象的な理由だけで待遇差が放置されている事例が散見されるという点があります。
最高裁判所の裁判例などを踏まえ、厚生労働省は労働者の納得感を高め不合理な待遇差を解消するために、令和8年10月1日施行で以下の3点を中心とした法改正等を行いました。
1. 雇い入れ時の労働条件明示事項の追加(法的義務)
パート・有期雇用労働者を雇い入れる際、従来の明示事項(昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、相談窓口)に加え、「通常の労働者(正社員)との待遇の相違の内容・理由等について説明を求めることができる旨」および「説明請求の相談窓口」の明示が新たに義務付けられます。
2. 「同一労働同一賃金ガイドライン」の改正
賞与・退職手当、各種手当(住宅手当・家族手当・無事故手当等)、休暇(夏季・冬季休暇等)、福利厚生施設などの待遇差について、それぞれの支給目的・性質に照らした不合理性の判断基準や具体的な考え方が明示されました。
3. 「雇用管理指針」の改正
正社員転換制度の適切な運用や、職務内容・成果等に応じた公正な評価による基本給の決定、過半数代表者の選出要件(管理監督者でないこと等)の適正化など、企業が取り組むべき望ましい措置が整備されました。
■ 2. 対策を放置した場合のリスク・デメリット
法改正への対応を怠り、従来の運用のまま放置した場合、企業は以下のようなリスクを負うことになります。
リスク1:10万円以下の過料(行政罰)の対象になる
雇い入れ時の労働条件明示義務違反については、パートタイム・有期雇用労働法第31条に基づき10万円以下の過料が科される可能性があります。
リスク2:待遇差をめぐる労働紛争・損害賠償請求の発生
労働条件通知書等で「待遇差について説明を求められる」ことが明記されるため、従業員から説明を求められる機会が確実に増えます。
不合理な待遇差(例:同じ業務・責任範囲なのに正社員にのみ支給されている手当がある等)について客観的な理由を説明できない場合、差額賃金の支払いを求める紛争(労働審判や民事訴訟)へ発展するおそれがあります。
リスク3:社内の信頼低下と人材流出
待遇に対する透明性や説明が不足していると、パート・有期社員の不満や不信感が募り、離職率の上昇や採用時の評価低下につながります。
■ 3. 人事担当者が行うべき具体的な実務
令和8年10月1日の施行日に向けて、人事労務部門で進めるべき実務は以下の3点です。
①「労働条件通知書」または「雇用契約書」フォーマットの改訂
雇い入れ時に交付する「労働条件通知書」(兼用雇用契約書を含む)の様式を更新します。
既存の「雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」の項目とは別に、待遇の相違に関する説明請求ができる旨と、その窓口情報を追加してください。
<記載記載例>
「※通常の労働者との間の待遇の相違の内容および理由等について、会社に説明を求めることができます。(説明請求窓口:人事部労務課 TEL: XX-XXXX-XXXX)」
※令和8年10月1日以降に新しく締結・更新する契約からこの新フォーマットを使用します。
②社内の待遇差に関する点検・理由の棚卸し
正社員とパート・有期社員との待遇の違いをまとめた「待遇差点検シート(一覧表)」の作成をおススメします。
基本給・賞与・退職金だけでなく、各手当(役職、住宅、家族等)や福利厚生の支給目的を一つずつ整理し、職務内容や転勤の有無などの違いに照らして合理的か確認します。
③「待遇差説明マニュアル」の作成と説明体制の整備
従業員から「なぜ正社員と手当に違いがあるのか」と質問があった際に、客観的かつ合理的に説明できるよう社内用説明マニュアルをの準備をおススメします。
単に「正社員だから」という理由説明は法的に認められないため、職務の範囲や責任の度合いの違いに基づいた説明回答を作成しておきます。
■ 4. 今後のトラブルを防ぐ予防策と社内運用改善策
今回の改正を機に、法対応にとどまらない根本的な運用改善を推進しましょう。
①就業規則・賃金規程の改訂と待遇の見直し
合理的理由の説明が難しい手当や制度がある場合は、「パートタイム・有期雇用労働者就業規則」や賃金規程を見直します。
なお、待遇差を解消する際に正社員の労働条件を一方的に不利益変更して引き下げることは避けるべきとされているため、パート・有期社員の待遇改善を中心とした計画的な改訂が求められます。
②正社員転換制度の周知と透明化
パート・有期社員から正社員へステップアップできる「正社員転換制度」の応募条件や選考プロセスを明確にし、定期的に社内へ周知します。
③労務チェックの定期化と過半数代表者選出の適正化
労使協定締結時等の過半数代表者について、管理監督者でないことや民主的な手続きで選出されているかを再確認し、適切な労務管理プロセスを維持しましょう。
■ さいごに
令和8年10月1日施行の法改正は、単に通知書の文言を書き換えるだけでなく、「自社の待遇差に客観的・合理的な理由があるか」を改めて点検する絶好の機会です。
「自社の労働条件通知書の改訂案をチェックしてほしい」「手当や賞与の待遇差について合理的な説明ができるか診断してほしい」といった疑問やご不安がございましたら、ぜひワールドワイド社労士事務所までお気軽にご相談ください。
貴社の実情に合わせた規程の見直しから説明マニュアルの作成まで、専門家が丁寧にサポートいたします。
ワールドワイド社労士事務所
公式サイト:https://w-wide.co.jp/