Date: 2026/4/18
こんにちは、ワールドワイド社労士事務所です。
社員のプライベートな変化は、なかなか会社が把握しづらいものです。
特に「離婚」の場合、本人が言い出しにくいこともあり、健康保険の扶養家族から外す手続き(被扶養者削除)が数ヶ月、時には数年も放置されてしまうケースがあります。
しかし、これには会社にとっても非常に大きな法的・金銭的リスクが伴います。
■ 扶養削除の遅れが招く「医療費返還」の恐怖
離婚が成立した瞬間、配偶者は法律上の親族ではなくなり、健康保険の被扶養者としての資格を即座に失います。
しかし、保険証をそのまま使い続け、元配偶者が病院にかかった場合、健康保険組合(または協会けんぽ)は、後からその医療費(不当利得)を本人に請求します。
「3割負担」で済んでいた医療費の残り「7割」を一括で返さなければならず、金額が数十万円にのぼることも珍しくありません。
本人が支払えない場合、手続きを怠った社員本人はもちろん、監督責任を問われた会社側もトラブルに巻き込まれる火種となります。
特に高額療養費などの受給があった場合は、返還額はさらに跳ね上がります。
■ 会社も無関係ではない?保険料の遡及修正と事務負担
健康保険料は、扶養家族が増えても減っても変わりません(介護保険料を除く)。
しかし、厚生年金や健康保険の「被扶養者異動届」を遡って提出する際、年金事務所や健保組合から「なぜこれほど遅れたのか」と厳しく追及されることがあります。
また、離婚に伴い氏名が変わっている場合や、住所が変わっている場合、これらも全て遡って修正しなければなりません。
さらに、会社が独自に「家族手当」を支給している場合、離婚していた期間にわたり支払われた手当は「過払い」となります。
この返還精算(給与からの控除)をめぐって社員とトラブルになるケースが多く、人事担当者にとって極めて精神的負担の大きい業務となります。
■ 「離婚したことを言いたくない」社員への対応
社員が手続きをしない最大の理由は「周囲に知られたくない」という心理的なものです。
しかし、これを放置することは社員本人を守ることにはなりません。
むしろ、後から多額の返還金が発生することの方が、本人にとって致命的なダメージになります。
会社としては、「プライバシーは守る(必要な部署以外には伏せる)が、社会保険上の義務は果たさなければならない」という点を明確に伝える必要があります。
手続きが遅れるほど、本人が支払うべき「不当利得返還金」の額が増えることを説明し、早期の届け出を促すことが、結果として社員本人のためになります。
■ リスクを最小限にするための社内ルール作り
こうしたトラブルを防ぐために、以下の3つの対策を推奨します。
1. 「身上変更届」の重要性を周知する:入社時研修や社内ポータルで、「戸籍上の変化があった場合は、5日以内に届け出る義務がある」ことを繰り返し伝え、遅れた場合の金銭的・法的デメリットを具体的に示しておきます。
2. 健康保険証の定期検認を活用する:年に一度行われる「被扶養者検認(検認)」の際、単に書類を集めるだけでなく、状況に変わりがないか(離婚や別居がないか)を改めて確認するステップを設けます。
3. 相談しやすい窓口の設置:秘密を厳守することを前提とした相談窓口を明確にし、本人が「会社に言っても大丈夫だ」と思える環境を作ります。
■ さいごに
社員の家庭事情に踏み込むのは気が引けるものですが、社会保険の実務においては「知らなかった」では済まされない事態も起こり得ます。離婚による扶養削除は、迅速な対応が会社と社員の両方を守ることになります。もし「長期未処理の案件を見つけてしまった」という場合は、今すぐご相談ください。
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