Date:2025/11/27
こんにちは、ワールドワイド社労士事務所です。
今回は、令和7年分年末調整における税制改正の変更点についてご紹介します。
年末調整、今年は特に負担を感じていませんか?
「昨年の変更点をようやく覚えたのに、また変わるのか」と、ため息をついている担当者様も多いのではないでしょうか。
毎年のように繰り返される税制改正ですが、令和7年分は実務への影響が非常に大きいのが特徴です。
特に、従業員様の生活に直結する「扶養」や「住宅ローン」に関する変更が含まれています。
本記事では、多忙な総務・人事担当者様が押さえておくべき重要ポイントを、分かりやすく解説します。
具体的に何が変わったのでしょうか?
◆「基礎控除」と「給与所得控除」
まずは、すべての納税者に関係する「基礎控除」と「給与所得控除」の見直しについてです。
物価高騰などの経済情勢に対応するため、税額計算のベースとなる控除額が引き上げられました。
具体的には、基礎控除額が従来の48万円から58万円に増額されています。
さらに、令和7年・8年分に関しては、合計所得金額に応じて最大37万円が加算される特例措置が設けられました。
【表1】基礎控除額の改正(令和7年・8年分)
| 給与収入の目安(給与のみの場合) | 基礎控除額(令和7・8年分) | 改正前 |
| 200万3,999円以下 | 95万円 | 48万円 |
| 200万3,999円超 475万1,999円以下 | 88万円 | 48万円 |
| 475万1,999円超 665万5,556円以下 | 68万円 | 48万円 |
| 665万5,556円超 850万円以下 | 63万円 | 48万円 |
| 850万円超 | 58万円 | 48万円 |
また、給与所得控除についても、パートやアルバイトの方に影響する改正が行われました。
給与収入190万円以下の方を対象に、控除の最低保障額が55万円から65万円へと引き上げられています。
【表2】給与所得控除額の改正
| 給与収入の目安(給与のみの場合) | 改正後の控除額 | 改正前の控除額 |
| 162万5,000円以下 | 65万円 | 55万円 |
| 162万5,000円超 180万円以下 | 収入金額×40%-10万円 | |
| 180万円超 190万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
◆「特定親族特別控除」
次に、今年もっとも注目すべき変更点である「特定親族特別控除」の創設について解説します。
これは、いわゆる「103万円の壁」などの年収の壁問題を解消するための施策の一つです。
対象となるのは、19歳以上23歳未満の親族を持つ従業員様です。
これまでは、扶養親族の所得が一定を超えると、扶養控除が適用されなくなりました。
しかし今回の改正により、親族の合計収入金額が123万円以上でも、所得に応じて控除が受けられます。
控除額は以下の表の通り、親族の所得に応じて段階的に設定されており、就労調整をせずとも手取りが減りにくい仕組みです。
【表3】特定親族特別控除額
| 特定親族の給与収入の目安(給与のみの場合) | 特定親族特別控除額 |
| 123万円超 150万円以下 | 63万円 |
| 150万円超 155万円以下 | 61万円 |
| 155万円超 160万円以下 | 51万円 |
| 160万円超 165万円以下 | 41万円 |
| 165万円超 170万円以下 | 31万円 |
| 170万円超 175万円以下 | 21万円 |
| 175万円超 180万円以下 | 11万円 |
| 180万円超 185万円以下 | 6万円 |
| 185万円超 188万円以下 | 3万円 |
この適用を受けるには、「給与所得者の特定親族特別控除申告書」の提出が必須となります。
新たに配布すべき申告書が増えるため、社内への周知と用紙の準備を早急に進めましょう。
◆「住宅ローン控除」
住宅ローン控除の手続きにも、ペーパーレス化の波が押し寄せています。
令和7年分の年末調整から、「調書方式」による住宅借入金等特別控除の適用が開始されます。
「調書方式」を選択した従業員様は、金融機関からの残高証明書の添付が不要になります。
金融機関から税務署へ直接データが送信されるため、担当者様の書類確認作業が軽減されるでしょう。
ただし、従来通り証明書の添付が必要な「証明書方式」の方も混在する点には注意が必要です。
どちらの方式に該当するかは、税務署から送付される通知書等で確認するよう、従業員様に案内してください。
まとめ
令和7年分の年末調整における主な変更点は以下の通りです。
- 基礎控除の増額:基準額が58万円になり、特例加算も設けられました。
- 給与所得控除の変更:最低保障額が65万円に引き上げられました。
- 特定親族特別控除の創設:19歳~22歳の親族がいる場合、新たな申告書が必要です。
- 住宅ローン控除の簡素化:「調書方式」なら残高証明書の添付が不要です。
本記事に関するご不明点や、労務管理全般でお困りのことがございましたら、お気軽にワールドワイド社労士事務所までご相談ください。
参考資料