Date: 2026-04-22
こんにちは、ワールドワイド社労士事務所です。
営業部長や工場の責任者だった生え抜きの社員が、その功績を認められて取締役に就任する。
中小企業ではよくある「出世」の光景です。
しかし、ここで経理・人事担当者が直面するのが「雇用保険の資格喪失」の問題です。
原則として役員は雇用保険に入れませんが、実態として部長職などの仕事を続けている場合は「兼務役員」として資格を継続できる可能性があります。
もし何も考えずにそのままにしておくと、いざという時に失業給付が受けられないといった事態に繋がりかねません。
今回は兼務役員の判定基準を解説します。
■ なぜ役員になると雇用保険を失うのか
雇用保険は「失業した労働者」を救済するための保険です。
法人の役員は、自分自身が経営の主体であり、従業員のように「解雇される」という立場にありません。
したがって、任期満了や解散で仕事を失っても、それは「失業」とはみなされないのです。
しかし、中小企業の現場では「取締役でありながら、実際には一台の機械を回している職長」や「名前だけ役員だが、実態は営業の第一線で働いている」というケースが多々あります。
こういった方々の労働者としての権利を守るために、兼務役員という例外があります。
■ 「兼務役員」と認められるための必須条件
「役員になったけど保険は続けたい」という希望だけでは通りません。
ハローワークは主に以下の実態をチェックします。
1. 部長、課長、工場長などの使用人としての職制を備えていること。
2. 代表権を持っていないこと。(代表取締役は100%不可です)
3. 就業規則が適用され、勤怠管理を受けていること。(会社の指示に従って働く立場か)
4. 給与の内訳として、役員報酬よりも「使用人分(給与)」の額の方が多いこと。(ここが非常に重要です)
特に4番目の金額設定で引っかかるケースが多いです。
役員報酬の方が高くなってしまうと、「主たる収入が経営者としての報酬」と判断され、労働者とはみなされなくなります。
■ ハローワークへの届出:必要な書類とポイント
役員就任後も雇用保険を続けたい場合は、「兼務役員雇用実態証明書」を管轄のハローワークに提出します。
この際、以下の書類を添付することが求められます。
・履歴事項全部証明書(商業登記簿謄本)
・定款
・組織図(役職の確認のため)
・賃金台帳、出勤簿
・労働契約書、就業規則
「役員だけど、タイムカードも押しているし、残業代も(使用人分として)計算されている」という証拠を揃えることが鍵となります。
これが証明できないと、遡って資格を取り消されることもあります。
■ 労働保険料の計算:役員報酬分はどう扱う?
無事に兼務役員として承認された後、毎年の労働保険料の計算に注意が必要です。
労災保険や雇用保険の料率を掛けるのは、「賃金部分(使用人分)」のみです。
経営者としての「役員報酬」部分には雇用保険料はかかりません。
給与と役員報酬が混ざって計算していると、保険料を払いすぎたり、逆に後の給付額が計算と違ったりするミスが起きます。
給与明細の項目を分けて管理することが、ミスを防ぐ唯一の方法です。
■ さいごに
現場を支える役員の皆さんが、将来の不安なく経営に専念できるよう、
適切な手続きを行うのが会社の義務です。
「この役員さんは加入できる?」
「提出書類が難解で進まない」
という場合は、ぜひ一度私共にお声がけください。
ハローワークとの折衝も含め、実態に即した最適なアドバイスをさせていただきます。
ワールドワイド社労士事務所
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