Date:2025/12/24
こんにちは、ワールドワイド社労士事務所です。
今回は、先日施行された「通勤手当の非課税限度額引上げと年末調整時の留意点」についてご紹介します。
「年末調整直前に制度変更? 何から対応すればいいの?」
12月も半ばを過ぎ、年末調整の業務が佳境を迎えているこの時期。
「ガソリン代高騰に対応して、通勤手当の非課税枠が広がった」と聞いて、
慌てている方も多いのではないでしょうか。
今回の改正は、物価高対策として歓迎すべきものですが、実務担当者にとっては複雑な計算と判断が求められます。
本記事では、改正のポイントと、実務上の具体的な対応策を整理して解説します。
1. マイカー通勤者の非課税枠が拡大しました
2025年(令和7年)11月20日に所得税法施行令の一部改正が施行され、
自動車や自転車などで通勤する従業員に対する通勤手当の非課税限度額が引き上げられました 。
対象となるのは、片道の通勤距離が10km以上ある従業員です 。
これは長引くガソリン価格の高騰などに対応するための措置で、2025年4月1日に遡って適用されます。
主な変更点は以下の通りです(片道の通勤距離に応じた1ヶ月あたりの限度額)。
- 10km以上15km未満: 7,100円 → 7,300円
- 15km以上25km未満:12,900円 → 13,500円
- 25km以上35km未満:18,700円 → 19,700円
- 35km以上45km未満:24,400円 → 25,900円
- 45km以上55km未満:28,000円 → 32,300円
- 55km以上:31,600円 → 38,700円
このように、距離区分によって数百円から数千円の引上げが行われています。
まずは、自社の従業員がどの区分に該当するかを確認する必要があります。
2.年末調整で「4月支給分」から遡っての精算が必要です
すでに4月から11月までの給与計算は終了しており、旧限度額に基づいて課税(源泉徴収)処理が行われていると思います。
この場合、本来は非課税であるはずの金額に対して税金を徴収してしまっていることになっています。
そこで、年末調整で正しい税額に計算し直し、払いすぎた税金を従業員に還付する必要があります。
具体的なチェックポイント
①対象者の洗い出し
まず、4月以降に通勤手当を支給した従業員のうち、「課税通勤費があった人」をピックアップします。
※全額非課税だった人は、枠が広がっても非課税のままなので影響はありません。
②非課税額の再計算
対象者の4月〜11月支給分について、新しい非課税限度額を当てはめた場合の「本来の課税対象額」を算出します。
例)片道18kmで月13,000円支給していた場合
- 旧:限度額12,900円 → 100円が課税対象
- 新:限度額13,500円 → 全額非課税(課税対象0円)
③年税額への反映
年末調整の計算システム等で、通勤手当の非課税額・課税額を修正入力します。
年間の課税所得を減額させることで、最終的な過納付分が還付金として精算されます。
給与計算ソフトを使用している場合は、改正対応のアップデートプログラムが提供されている可能性があります。
手計算での修正はミスのもとになります。
まずはベンダーからの案内を確認しましょう。
3. 「支給額」も引き上げるべき? 会社の判断基準
ここでよくある誤解が、「非課税枠が上がったから、通勤手当も上げなければならない」というものです。
結論から申し上げますと、法的な義務はありません。
通勤手当の支給有無や算出方法、支給額については、会社の任意で決めることができるからです。
一般的に、通勤手当は「実費相当額」を支給するものと考えられています。
マイカー通勤の場合、以下の要素を勘案して決めることが多いでしょう 。
- 通勤距離
- マイカーの一般的な燃費
- 市場のガソリン価格
そのため、非課税枠が変わったからといって直ちに支給額を変える必要はありませんが、
ガソリン代等の現状を踏まえ、実費補填の観点から見直すことは理にかなっています。
4. 要注意! 知らないうちに支給額が上がるケース
注意が必要なのは、就業規則等に「所得税法に定める非課税限度額の範囲内で支給する」といった規程がある場合です。
この場合、今回の改正に伴い、従業員に支給する通勤手当も自動的に引き上げられることになります 。
まずは自社の規程が非課税枠と連動しているかを確認し、その上で年末調整での再計算を進めましょう。
本記事に関するご不明点や、労務管理全般でお困りのことがございましたら、
お気軽にワールドワイド社労士事務所までご相談ください。
