MENU

忘年会や接待ゴルフでのケガは労災?業務認定の境界線

6
0

Date:2026/5/27
 
こんにちは、ワールドワイド社労士事務所です。

「忘年会で羽目を外しすぎて骨折した」「接待ゴルフ中に転んで靭帯を損傷した」

――もしもこんな事態に遭遇したら、これって労災になるのでしょうか?

プライベートな活動に思えるイベントでも、実は業務とみなされるケースもあります。

今回は、忘年会や接待ゴルフといった「業務外にも見える活動」における労災認定の境界線について、

分かりやすく解説していきます。

 

 

 

 
 

■ そもそも「業務上」ってどこまで?労災認定の基本

労働災害(労災)とは、労働者が業務中に、または通勤中に負傷したり病気になったり、あるいは死亡したりした場合に認定されるものです。

この労災認定を受けるためには、主に「業務遂行性」と「業務起因性」という二つの要件を満たす必要があります。

まず「業務遂行性」とは、

労働者が事業主の支配・管理下にある状態を指します。

例えば、会社の敷地内で仕事をしている時間はもちろんのこと、出張先で業務を行っている時間、さらには業務と密接に関連する準備や片付けの時間なども含まれます。

重要なのは、会社からの指示や命令を受けて行動しているかどうか、という点です。

次に「業務起因性」とは、

その負傷や疾病が業務に内在する危険が具体化したものである、ということを意味します。

簡単に言えば、「その怪我や病気が仕事が原因で発生した」と言えるかどうか、ということです。

業務中に発生した事故であっても、業務とは全く関係のない個人的な行為(例えば、休憩中に個人的なトラブルで喧嘩をして怪我をした場合など)が原因であれば、業務起因性は認められません。

特に、通常の勤務時間外や会社の敷地外で行われる活動において、どこまでが「業務上」とみなされるのかは、状況によって大きく解釈が分かれることがあります。

 
 

■ 忘年会で怪我!これって労災?

会社の忘年会で怪我をしてしまった場合、労災が認定されるかどうかは、その忘年会がどれだけ「業務としての性格」を持っていたかによって大きく左右されます。

一般的な判断基準

  • 会社の強制参加であるか:参加が「義務」として課せられていた場合は、業務性が高いと判断されやすくなります。単なる推奨や自由参加では、業務性は低いとみなされます。
  • 費用は会社負担か:忘年会にかかる費用を会社が全額負担している場合、業務の一環として位置づけられていると判断される可能性があります。参加者が自己負担している・別途徴収されている親睦会費から支払われている場合は、業務性は低いと見られます。
  • 会社の行事として計画・実施されたか:会社が企画し、運営主体となって実施された公式行事である場合、業務性が認められやすくなります。部署内の有志が集まって開催した個人的な飲み会とは、性格が異なります。
  • 事業主の指揮命令下にあったか:忘年会中に、事業主(または上司)が具体的な指示や管理を行っていたかどうかも重要な要素です。例えば、特定の役職者が挨拶や乾杯の音頭を取るように指示されていた、といった場合です。


過去の裁決例では、単なる親睦を目的とした自由参加の忘年会で発生した事故は、原則として業務上とはみなされない傾向にあります。

しかし、例外的に、会社が福利厚生の一環として主催し、全社員に強く参加を奨励しており、かつその場での秩序維持を会社が管理していたようなケースでは、業務性が認められた例もあります。

飲酒による過度の酩酊や、個人的な喧嘩による負傷などは、業務起因性が否定されることが多いでしょう。

判断は非常に繊細であり、個別の状況を詳細に確認する必要があります。

 

 
 

■ 接待ゴルフは?出張先での行動は?グレーゾーンの判断基準

忘年会と同様に判断が難しいのが、接待ゴルフや出張先での活動です。

これらもまた、その「業務性」の程度によって労災認定の可否が分かれます。



【接待ゴルフの場合】

接待ゴルフは、一般的に業務としての性格が強いと判断されやすい傾向にあります。

以下の要素が判断材料となります。

  • 会社の明確な指示:顧客との関係構築や契約獲得のために、会社から参加を強く指示・命令されていたか。
  • 費用負担:プレー費や交通費、飲食費などを会社が負担しているか。
  • 業務上の必要性:ゴルフが、その顧客との商談や業務遂行にとって不可欠な活動であったか。
  • 参加者の限定性:特定の顧客や取引先との関係維持を目的とし、参加者が限定されていたか。


例えば、会社からの明確な指示で、特定の取引先との関係強化のために参加し、費用も会社が負担しているゴルフ中の事故であれば、業務遂行性・業務起因性が認められやすいでしょう。

一方で、個人的な趣味で上司や同僚と行うゴルフは、たとえ業務上の知り合いであっても労災とはみなされません。

【出張先での行動の場合】

出張中の事故については、原則として出張期間中は事業主の管理下にあるとみなされます。

しかし、全ての行動が業務上となるわけではありません。

  • 業務行為に付随する活動:宿泊先への移動、宿泊、食事といった、出張業務に通常伴う行動中の事故は、業務遂行性が認められやすいです。
  • 業務外の私的行為:観光や個人的な買い物、友人と会うなどの私的行為中の事故は、業務遂行性が否定されます。
  • 例外:出張先でのホテル火災や地震などの不可抗力による事故は、私的行為中であっても、その場所に出張していなければ遭遇しなかったであろうという理由から、業務起因性が認められる場合があります。


「どこまでが業務で、どこからがプライベートなのか」という線引きは、ケースバイケースで慎重な判断が求められます。

なお、出張中の移動中の事故は、それが宿泊施設から現場への移動であっても、通勤災害ではなく業務災害とみなされます。

 
 

■ 企業が知っておくべきリスク管理と社員への周知

企業が講じるべき対策と、従業員への周知事項は次の通りです。

  • 就業規則や社内規定での明確化:どのような行事が業務とみなされるか、どのような場合に労災の対象とならないかについて、就業規則や社内規定で具体的に明記することが重要です。「会社が主催し、参加が強制される行事については業務とみなす」「私的な親睦会や個人の判断による活動中の事故は、労災の対象外とする」といった基準を明確に定めることで、従業員の誤解を防ぎます。
  • イベントごとの事前通知:忘年会や社員旅行、社内イベントなどを企画する際には、その行事の性格(自由参加か、業務の一環か)、費用負担、参加推奨の度合いなどを事前に従業員に明確に伝達しましょう。これにより、従業員は自身の行動が業務と関連するかどうかを判断しやすくなります。
  • 安全配慮義務の徹底:たとえ自由参加のイベントであっても、会社が場所を提供したり、一部費用を負担したりする場合は、参加者の安全に配慮する義務が生じる場合があります。過度の飲酒を推奨しない、危険な行為を禁止するなど、安全管理を徹底しましょう。
  • 適切な保険の検討:労災保険は業務上の事由によるものに限定されますが、業務外のイベントでの事故に備えて、傷害保険やレクリエーション保険などの加入を検討することも有効です。

 

 
 

■ さいごに

忘年会や接待ゴルフといった会社のイベントでの労災認定は、その活動が「業務遂行性」と「業務起因性」をどれだけ満たしているかによって判断が分かれます。

会社からの指示の有無、費用負担、強制参加の度合い、目的などが重要な判断材料となり、個別の状況に応じて慎重な判断が必要です。

企業側は、就業規則での明確化やイベントごとの事前通知によって、従業員との認識のズレをなくし、不必要なリスクを回避することが求められます。

従業員一人ひとりが労災認定の基準を理解し、安全に配慮した行動を心がけることで、安心して働ける職場環境を築いていきましょう。

 
 

ワールドワイド社労士事務所のHOMEに戻る