Date: 2026/5/29
こんにちは、ワールドワイド社労士事務所です。
毎年6月から7月にかけて行われる労働保険の『年度更新』。
前年度に支払った賃金総額に基づく確定保険料と、新年度の概算保険料を計算して精算する非常に複雑な実務です。
細心の注意を払って計算していても、賃金の集計漏れや保険料率の適用ミスなどにより、労働保険料を本来よりも多めに申告・納付してしまうケースは少なくありません。
今回は、もし、労働保険料を多めに払ってしまった場合、そのお金は返ってくるのか、具体的な還付・充当手続きについて解説します。
1. 労働保険料の「年度更新」と「概算・確定精算」の仕組み
2. 計算ミスで多めに払った保険料は返還(還付)されるのか?
3. 多すぎた労働保険料を取り戻すための「還付請求」と「充当」の手続き
4. ミスを防ぐための賃金総額集計のポイントと注意点
5. さいごに
■ 1. 労働保険料の「年度更新」と「概算・確定精算」の仕組み
労働保険(労災保険・雇用保険)の保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間に、
全ての労働者に対して支払った『賃金総額』に保険料率を乗じて算出されます。
しかし、年度の開始時点ではその年に支払う正確な賃金総額が分からないため、
・『概算』で見込みの保険料を前払い(納付)する
・翌年の年度更新の際に、実際に支払った『確定』の賃金総額を計算し直してその差額を精算する
という、「概算・確定精算」の仕組みをとっています。
このため、前払いした概算保険料が実際の確定保険料を上回る(払いすぎになる)ことは、
制度上よく発生します。
通常は新年度の概算保険料と相殺して精算しますが、計算自体を誤って多く支払いすぎた場合は、
別途正しい修正手続きを行う必要があります。
■ 2. 多めに払った保険料は返還(還付)されるのか?
結論から申し上げますと、計算ミスや申告誤りによって本来よりも多めに納付してしまった労働保険料は、正しい手続きを行えば確実に返還(還付)されます。
労働保険徴収法に基づき、過誤納となった保険料については、事業主が労働局等に対して過誤納金の還付(または充当)を求める権利が認められています。
・雇用保険の対象とならない役員や臨時雇用の賃金を含めて集計してしまった
・労災保険料率を誤って高い業種のもので計算してしまった
等のケースが発覚した場合は、過去に遡って申告内容を修正することができます。
ただし、還付請求権には『2年間』の消滅時効があります。
ミスに気づいたら放置せず、過去の申告書を速やかに見直して手続きを行う必要があります。
■ 3. 多すぎた労働保険料を取り戻すための「還付請求」と「充当」の手続き
過大に支払った労働保険料を精算する手続きは、以下の通りです。
1.正しい金額を記載した『申告書(訂正申告)』と『労働保険訂正申告理由書』を管轄の労働局等へ提出します。
※この際、訂正の根拠となる賃金台帳や源泉徴収簿などの資料添付が求められます。
払い過ぎた分の処理には、
・次回の保険料と相殺する『充当』
・口座へ直接返金する『還付』
の2種類があります。
事業継続中であれば『充当』とするのが一般的です。
この場合、訂正申告書を提出するだけで自動処理されるため、別途請求書を出す手間はかかりません。
一方、事業廃止時や高額な過誤納などで口座への『還付』を希望する場合には、
あわせて『労働保険料還付請求書』を提出します。
なお、これらの手続きには「起算日から2年」の時効があるため、誤りに気づき次第、早急な対応が必要です。
■ 4. ミスを防ぐための賃金総額集計のポイントと注意点
年度更新での過誤納や計算ミスを防ぐためには、日頃の賃金管理と集計ルールを明確にしておくことが極めて重要です。
特に間違いやすいポイントとして、
『雇用保険の対象から除外される人(法人の役員、同居の親族、所定労働時間が週20時間未満の労働者など)』の賃金を、誤って雇用保険分の賃金総額に含めてしまうミスがあります。
労災保険は役員等を除き全労働者が対象となりますが、
雇用保険は被保険者資格のある労働者のみが対象となるため、
双方で『賃金総額』の対象者が異なる点を正しく理解しなければなりません。
また、役員であっても
「兼務役員の場合は労働者分の給与のみが集計対象になる」
など、判断が複雑なケースもあるため、年1回の更新時だけでなく、月々の給与計算の段階から保険料控除と賃金区分の設定を適切に行うことが求められます。
■ さいごに
労働保険料の年度更新は、細かく複雑なルールが多いため、気づかないうちに保険料を過大に納付してしまっていることも少なくありません。
もし過去の申告にミスが見つかっても、2年の時効内であれば還付や充当によって取り戻すことが可能です。
毎年の年度更新に向けて、一度社内の集計表や過去の申告内容を見直してみてはいかがでしょうか。
疑問点や計算に不安がある場合は、ぜひ当事務所などの専門家へお気軽にご相談ください。
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