最低賃金上昇率4.3%の衝撃
最近、最低賃金の上昇率が4.3%に達したというニュースが話題になっています。
この変化は企業にとって大きな影響を与える可能性があります。今回は、その影響と対策について考察します。
最低賃金の影響
最低賃金の上昇は、企業が労働者に支払う最低限の賃金を高めることで、全体的な賃金水準に影響を与えます。
特に、低賃金労働者が多い中小企業では、この影響は無視できません。
また、一度、最低賃金に抵触したことを理由にベースアップをせざるを得ない状況になってしまうと、
企業は支払い能力に関係なくベースアップをし続けなければならないことになります。
1年当たり4.3%を超えるようなベースアップというのは、簡単なことではありませんので、
経営者は長期的な目線に立ち、どのように舵を切っていくのかを早い段階で考えていかなければなりません。
ベースアップの必要性
最低賃金の上昇に伴い、企業はベースアップ(ベア)を検討する必要があります。
これは、従業員のモチベーションを維持し、人材の確保と定着を図るためにも重要です。
ただし、企業はベースアップと定期昇給の違いを理解しておく必要があります。
失われた30年とも言われていますが、30年近くベースアップをしていない時代が続くと、
企業内でベースアップを経験している人がいないという状況です。
ベアと昇給の違いを理解しないまま、最低賃金をクリアする為にただ単に昇給させているようであれば、
一旦問題は片付いたように感じますが、社内の格差がどんどん縮まってしまい、
賃金が低い人はほとんど賃金水準が一緒といったことになりかねません。
それでは結局従業員のモチベーションに課題が残ってしまいます。
また、最低賃金が4.3%上がっている状況で、自社のベア率が4.3%未満であれば、
国の定める最低賃金と自社の最低賃金との格差は縮まっているわけで、
いずれ自社の賃金も最低賃金と同等になる可能性があります。
実務のポイント
1.市場調査: まず、同業他社や市場全体での賃金水準を調査。
2.予算設定: 上昇した最低賃金に合わせて、出来れば最低賃金の上昇率を超える率の予算を確保。
3.コミュニケーション: 従業員に対して、ベースアップの方針とタイムラインを明確に伝えます。
注意点
賃金以外のコスト
最低賃金の上昇は、賃金だけでなく、社会保険料や福利厚生費なども増加させる可能性があります。
これらも考慮に入れて、全体的なコストを見積もる必要があります。
法的リスク
最低賃金に適合していない場合、法的な問題に直面する可能性があります。
最低賃金は時給で発表されるため、時給者に対しては容易に判定が可能ですが、
月給者でも時間単価で最低賃金を下回ってはいけません。
全従業員の賃金水準を今一度確認し、コンプライアンスを確保することが重要です。
従業員の期待と現実
最低賃金の上昇が話題になると、従業員も自動的に高いベースアップを期待する可能性があります。
そのため、コミュニケーションが非常に重要です。
現実的なベースアップの範囲とタイムラインを明確にし、従業員の期待と現実のギャップを埋める努力が必要です。
最低賃金の上昇は、企業にとって多くの課題をもたらしますが、
適切な対策とコミュニケーションによって、これを機会に変えることも可能です。
賢明な戦略と実行力が求められる時期になりました。